久しぶりの有川浩の著書。このひとの作品相変わらずめっちゃ面白い。
本の詳細・あらすじ
ストーリー・セラー/有川浩(幻冬舎文庫)
妻の病名は、致死性脳劣化症候群。複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、やがて死に至る不治の病。生きたければ、作家という仕事を辞めるしかない。医師に宣告された夫は妻に言った。「どんなひどいことになっても俺がいる。だから家に帰ろう」。妻は小説を書かない人生を選べるのか。極限に追い詰められた夫婦を描く、心震えるストーリー。
二組の夫婦の物語
同じ会社で働く、実は物書きだった地味な彼女と、大の読書好きの彼との物語が2つ入ってます。
Side:Aはあらすじ通り作家である彼女が思考すればするほど寿命を縮める奇病に侵されてしまう。既にどれだけ寿命が減ったのかも分からない中、このまま小説家として生きるか筆を置くかの選択を迫られる。
Side:Bは逆に彼女の一番のファンである夫が死に至る病に侵されます。癌で余命幾ばくということがわかってからの彼の行動がほんと胸に来ました。
憧れの作家と一番のファン、そして夫婦でもある二人。
病気がわかる前とそれを知ってしまった後、どちらでも作家の妻と彼女の大ファンである夫が互いのことを思いやっており、涙なしには読めない人もきっといると思います。
僕は泣くまではいきませんでしたが気持ちをすごい揺さぶられ、ページを捲る手は止まらなかったです。
夫がかっこいい
僕が男だからってのもありますがやっぱり男性目線で読んじゃいます。
それに自分も本は「読む側」で書く側にはなることはないです。そんな自分が自分の大好きな小説を書く人と出逢うことがあったらどうなるんだろ。
特にSideBの夫がスーパーマン過ぎてかっこいいです。家事も仕事もこなして奥さんの執筆作業を円滑に進めることを第一に考えて…。そして何より癌が発覚してからの行動。
自分が癌に侵されていてあと少ししか生きられなくなった夫は友人たちと連絡をとります。
自分と久しぶりに再会したのが葬式だった。というのを嫌がっての行動なんですが、これって病気をしっかり受け止めないとできなよなあと思ったり。
あとはSideAの方の序盤で読者とは何たるかを熱く語るところが素晴らしい。
「『読む側の』俺たちは単純に自分の好きなもんが読みたいんだ。だから自分の好きじゃないもんに当たっても、それは外れだったって無視するだけなの。ベストセラーでも自分にとって外れのこともあるし、その逆もあるし。ただ自分の楽しめなかったもんはどんどん流していくの。さっさと次の当たり引きたいし、自分にとってつまんなかったもんにかかずらわってる暇なんかないの。そんな暇あったら次の面白いもん見つけたいの。時間は有限なんだ、当然だろ。自分にとっての外れなんか、さっさとわすれるだけだよ。覚えてるだけ脳の容量が勿体ない」
そうです。僕ら読者は自分のアタリを引きたいんです。
有川さんの本はアタリが多くていいですね。
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