【小説感想】死を前にした患者にすべきことは何だろう?『最後の医者は桜を見上げて君を想う/二宮敦人』

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病気に対してどう向かい合うことが正しい医療者としての在り方なのだろうか。

25万部売れたベストセラー。友人のおすすめで読みました。

面白かった。

自分が医療系の仕事をしてるから患者視点と医者視点で読むことができ、「自分ならどう話すんだろう」って考えながら読みました。

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本の詳細・あらすじ

最後の医者は桜を見上げて君を想う/二宮敦人

あなたの余命は半年です――ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。

死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。

だが、副院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。

対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは?

究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか?

それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。息を呑む衝撃と感動の医療ドラマ誕生!

【文庫書き下ろし】

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両極端の信念を持つ医者

病気になった患者さんが病院にきて望むこと

それはもちろん「治してもらって病気になる前の状態に戻ること」です。

そのために患者は病院にくるし、医療者もそれにこたえるために治療します。

でも医療技術が発展している現代でも治療できない病気というものは存在します。

そうなると治療の目的は完治することから、現状維持・苦痛の軽減になります。

じゃあ治らないとわかったら治療する意味がないじゃないか、と言われるとそんなことはありません。

医療技術は日々進歩しています。今は治らない病気でも、5年後、10年後には治療法が発見されるかもしれない。

だからこそ患者は今できる最善の治療を受けて、その可能性にかけるべきだ。

患者が生きることを諦めないために、できることをすべて検討し、1日でも長く生きるために最後まで患者を鼓舞し続ける

「熱血」という言葉がふさわしい福原

自分が生きることのできる残り時間が限られている。

残された時間をすべて治療に、病気に向き合うことだけに使うだけが患者の選択肢ではない。

自分がしたいこと、残される家族のためにできることは何なのかを考え、そのために時間を使うことだって選択できる。

泡沫の夢を患者に抱かせるのではなく現実を認識させ、治療よりも残された時間をどう使うかを淡々と悟らせる、

逆に言うと長く生きる可能性が高くてもそれを刈り取る「冷酷」な桐子

どちらの信念も正しいと思います。でもその考えが患者とマッチするかといえばわかりません。

そして自分がそういった患者さんと接するときに何て言うべきなのかも正直わかりません。

頑張って治療しましょう と言うべきか 残された時間を大切にしてください と言うべきか

一生悩み続ける問題ですよね。

自分の命の終わりを知ったときどうするべきか

じゃあ自分が患者だったらどうするのか?

今は治療法がなくても将来見つかることを信じて、1日でも長く生きるためにできることをすべてやるのか。

残された時間でやりたいことをやり切って死ぬべきか。

これも状況によりけりですが…。

物語に出てくるベルトコンベアの例えが印象的でした

「診断さえついてしまえば、やることは決まっています。(略)この流れは患者が誰であろうと、基本的には変わりません。ベルトコンベアに乗せられた製品のように、決まったラインを流されていくのです。だから、人によっては忘れてしまうんですよ。自分が人間であることをね。」

「あなたが、人間であることを思い出さなければ、病院という場所では工業製品に成り下がってしまうんですよ」

ベルトコンベアに乗るのか降りるのかを自分で考えて決める。

現実を受け入れて、どっちを選ぶにせよ自分が納得した道を選ぶ。

何事もそうなんだけど、周りがどうこうではなく自分で答えをだすのが大事なんだよね。

面白かったです。

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