表紙とタイトルに釣られて手に取った作品。
初めての著者だったんですが作者プロフィールを読むとコバルト文庫で本を出しているらしい。そりゃ読まないわけだわ。
ほっこりあったかくなる小説でした。
本の詳細・あらすじ
ななつぼし洋食店の秘密/日高 砂羽
没落華族の令嬢・十和子に新興企業の若社長・桐谷との結婚話が持ち上がる。金が欲しい兄と箔をつけたい桐谷の利害が一致した格好だ。お見合いの席で十和子は「自分に一切干渉しないこと」と条件を出す。なぜなら十和子は下町で洋食店を営んでおり、関東大震災で行方不明となった店主・一哉が戻るまで店を守るつもりなのだ。だが、意外にも桐谷は条件をのみ…?
利害が一致した形だけの結婚のはずが…
関東大震災のあとの東京が物語の舞台になります。
主人公である十和子が結婚相手に求める条件は「自分が洋食屋で働いてることに一切文句を言わないこと」
今では女性が働くことは普通ですが、震災のあった大正の頃は女性は家を守るものというのがまだ根強い時代です。
しかも華族である十和子は世間体+政略的な面から親族から結婚を迫られていました。しかし十和子も自分の意見を曲げない強い女性で理想の相手を見つけ出します。
夫となる桐谷は「自分は仕事が忙しく構ってる暇はない。でも周りがうるさい。」ということで相手を探していました。
お互い干渉しないことを条件に婚約することとなった二人ですが、結婚するとなれば相手のことも少しずつ分かってきます。
どこからが干渉なのか。相手のことを知ろうとすることも干渉になってしまうのではないか。十和子が提案したのにその線引きで悩んでしまうところが可愛かったです。
想い人のいる2人の距離が縮まっていく
十和子が洋食屋にこだわるのは、行方絵不明になってしまった異母兄の一哉が帰ってくる店を守るためでした。
でも今ここにいない相手のことを想ってたのは十和子だけではなかったんですよね。桐谷もまた妻を家事で亡くしており、そのときに負った火傷のあとを手袋で隠しています。
互いの過去を紐解きながらも、デートしたりして少しずつ距離が縮まっていくのがいい感じでした。
十和子は口では不干渉だといいつつも桐谷のことが気になっていて、桐谷は口には出さないけど最初から十和子のことをしっかりと見ていて気遣っている性根の良い男性で素敵でした。
ちょっとした騒動を経てお互いのことを知って一緒に前を向いたところでお話が終わってしまったのが残念です。
まだプロローグを読んだだけって気がして物足りない…。
その先まで書ききって文庫本にしてほしかったなあ。
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