今まで読んだSFのなかで一番面白かったです。
これ単体でも面白いと思いますが、できれば虐殺器官を読んでからの方がより楽しめます。
本の情報・あらすじ
ハーモニー/伊藤 計劃(早川書房)
21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。
パーソナルデータがすべて公開され健康状態も全てオープンなディストピア
ITHO PROJECTの第一弾:屍者の帝国を見に行った際に予告が流れていて面白そうだったので購入。
映画公開は11月だがそれより前に読み終われて良かった。めっちゃ面白い。伊藤計劃の3作品の中で一番良かった。
世界観が「虐殺器官」よりあとの世界であり、巻末インタビューにネタバレとかもあるので未読の人はまず「虐殺器官」を読んでから読むべし。
暴力的なもの(言葉・映像・本など)や体に害をなすとされるもの(アルコール・カフェイン・たばこなど)が徹底的に排除され、隣人を愛せよと教え込まれ誰かに不幸があれば関係なくても我がことのように悲しみ手厚いカウンセリングを受けることができる、優しさが溢れかえった世界。
人の体にはWatchMeという体内の情報を逐一外部に送信する機械を埋め込み、本人が気づかない異常でもすぐに医薬品を投与され痛みも苦しみも一切知る事のない世界。
今でも現在いろんなものを控えたり規制されたりしているがそれが極まった世界が描かれているのですが、ここまでくると気持ち悪すぎる。
でも将来絶対こんな世界にならないとも言い切れないところが怖い。
虐殺器官のような死と暴力が溢れる無秩序な世界も嫌だが、自分の体さえ社会の一部だという徹底された管理社会もごめん被る。
争いのない世界を作るために最終的に行き着くところは何も考えない、意識のない社会なんて嫌すぎる。
すべての人が全く同じ価値観で合理的に物事を判断できればそれはもう争いも何も起こらない平和で調和のとれた世界ができるだろうけど、果たしてそれはユートピアと呼べるんだろうか。
僕はこれからも脳内で会議しながら生きていきたい。
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