2016年に書いた記事です。
先日行われた学会の印象に残った講演で、高齢者や透析患者の調剤をする機会が多いので大変参考になりました。
ちゃんと頭に残すために自分なりにまとめておこうと思います。
演者である平田先生の研究室のHPで、今回の講演のスライドが無料で落とせますので興味ある方はお早めにDLを。(公開期間は2016/01/25から1週間だけとのこと)
鎮痛剤を出すとなると、多分ロキソニンを始めとするNSAIDsか、カロナール(アセトアミノフェン)のどちらかがまず処方されると思います。
特に高齢者の場合、だいたいどこか痛んでます。肩であったり腰であったり膝であったり。
痛いのを我慢するのはよくないですが、痛み止めを常に服用するのはどうなのかなーと。医師も患者も惰性で処方してたりしませんか?
高齢者は体の機能が低下している
年をとると筋力や骨だけでなく、心臓などの臓器の機能も低下します。
体内に入った薬物の多くは、肝臓で代謝されたあともしくはそのままの状態で腎臓を通って尿の中に排出されます。
そのため腎機能が低下していると薬の排出が滞ります。肝臓で代謝されて無害ならいいんですが、そうでない場合は何らかの副作用が起きてしまう可能性があります。
NSAIDsは薬剤性腎症の原因薬剤のひとつ
腎臓が悪くなる原因のひとつに薬剤性腎症があります。
講演で示されたスライドによれば、薬剤性腎症を薬の種類別に分けるとNSAIDsは2番目に多いそうです。(1番は抗菌薬)
NSAIDsの作用はPG合成を阻害することによる消炎沈痛解熱作用です。
NSAIDsは遊離されたアラキドン酸からPGを合成する経路の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼの働きを阻害することにより抗炎症・鎮痛作用を発揮する。また、発熱時には種々のサイトカインの産生が促進され、視床下部にある体温調節中枢におけるPGE2の合成を増加させ体温を上昇させるように視床下部に働きかける。NSAIDsは発熱時に産生されるPGE2の合成を阻害することで、解熱作用をもたらす。
PGはいろんなところで合成されており、NSAIDsはそれらのPGの合成も阻害してしまうため副作用が生じてしまいます。
一般的なのは消化管出血です。これはNSAIDsが胃粘膜を保護するPGI2やPGE2の合成を阻害するためにおこります。
では腎臓ではどうなのかというと、腎臓を細かくみると腎小体というものの集まりになります。腎機能が低下(糸球体濾過量)が減少すると、腎小体に入り込む血管を拡げることで流入量を増やして腎機能を維持しようとします。
この血管を拡げるのにPGが必要になるのですが、NSAIDsを服用しているとそれができません。
腎小体に流れ込む血液の量が減ると、血液が運んできてくれる酸素や栄養素の量も減ります。
またNSAIDsはネフローゼ症候群を起こすこともあるので、だらだらと飲み続けるのには注意が必要です。
腎臓に配慮するなら鎮痛薬の第一選択はアセトアミノフェン
米国腎臓財団は、腎臓病患者への鎮痛薬はアセトアミノフェンを推奨しており、米国老年医学学会の鎮痛療法ガイドラインでもアセトアミノフェンを推奨しているそうです。
日本では、アセトアミノフェンとNSAIDsの添付文書に同じような記載がされています。
しかしアセトアミノフェンの作用機序はPGの合成阻害ではないので、NSAIDsの代表的な副作用である腎障害の悪化、消化性潰瘍、易出血性、アスピリン喘息は起こらないのです。
なので、添付文書の記載内容を改めるべきだとおっしゃってました。
CKDガイドラインも、鎮痛薬は全て少量短期投与ではなくアセトアミノフェンを使用を推奨する記載にするべきだとも。
薬剤師ができる処方提案
じゃあ医師や患者さんにどう処方を提案するのかですが、
・同じNSAIDsでも外用剤だと全身に移行する薬物量が少なくてすむのでそちらに変更
・頓服で処方(毎日飲まなくてもいいこと伝える)
・アセトアミノフェンに変更する。(過量だと肝障害になるので注意)
特に痛くなければ飲まなくてもいいってことを伝えるのは大事かなと思いました。
まとめ
既に腎機能が低い患者さんにNSAIDsが減量してないか気を付けているがこれからは高齢者に鎮痛薬が処方されているときは常に意識していきたい。
薬の量が増える事自体、毎日の服用の負担になるので頓服への提案は実践していきたいと思う。
また講演の最後に今日本腎臓病薬物療法学会に入ると腎機能低下時の薬剤投与量一覧と動態パラメータをまとめた本をくれると言っていたが、かなり欲しい。
市販されたら絶対買うのになー。悩む。
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