看護師からの質問で全然わからなかったので調べました。
カデックスもユーパスタも褥瘡の治療で使われる塗り薬ですが、何が違うんだろう。
褥瘡とは?
褥瘡(床ずれ)は寝たきりの老人などにおこりやすい疾患です。
ずっと同じ姿勢でいると一定の部分に体重がかかります。体重がかかる場所が変わらないと、その部分の血液のめぐりがずっと悪いままなので必要な栄養や酸素が送れません。そのまま放っておくとその部分が壊死していき褥瘡となります。
褥瘡には急性期か慢性期なのか、慢性期でも褥瘡の深さによって治療方法が異なります。
褥瘡の深さが真皮までのものを浅い褥瘡、皮下組織まで到達しているものを深い褥瘡と分類されます。
褥瘡の治療と評価「DESIGN-R」
褥瘡の評価には「DESIGN-R®(褥瘡経過評価用)」を用います。
・Depth 深さ
・Exudate 滲出液
・Size 大きさ
・Inflammation/Infection 炎症/感染
・Granulation 肉芽組織
・Necrotic tissue 壊死組織
・Pocket ポケット
褥瘡の治療ではそれぞれの項目を評価し、それに対応した外用薬を使う必要があります。
カデックスとユーパスタではユーパスタのほうが汎用性が高い
褥瘡の治療において保湿はとても大事です。浸出液を逃さないようにドレッシング材で褥瘡部を覆うのが通常ですが、浸出液が多すぎると溢れ出てしまいます。
カデックス軟膏とユーパスタはともに高い吸水効果があり、褥瘡の浸出液が多い場合に用いられます。
マルホが「DESIGN-R®(褥瘡経過評価用)」に対応した外用剤一覧をまとめてくれています
https://www.maruho.co.jp/medical/toolorder/file/tool/5079604001.pdf
これによると、
カデックス(カデキソーマ・ヨウ素)はInflammation/Infection 炎症/感染とExudate 滲出液に対して推奨度Bとなっています。
それに対してユーパスタ(ポビドンヨード・シュガー)はInflammation/Infection 炎症/感染、Exudate 滲出液、Granulation 肉芽組織、Size 大きさに対して推奨度Bとなっています。
ユーパスタのほうが汎用性がありますね。
ではお互い推奨度BだったInflammation/Infection 炎症/感染とExudate 滲出液を改善したいときにはどう使い分けるのか。
カデックス軟膏及びユーパスタは添付文書によると以下のような効果があります。
・カデックス軟膏…ヨウ素による殺菌作用及びカデキソマーによる滲出液吸収作用による潰瘍治療促進
・ユーパスタ…ポピドンヨードによる殺菌作用及び白糖による浸出液吸収、肉芽形成作用
カデックス軟膏とユーパスタを比べるポイントは2点。「殺菌効果」と「吸水性」です。
「殺菌性」はカデックスが強い
カデックス軟膏・ユーパスタともにヨウ素による殺菌効果がありますが、その効果はカデックス軟膏の方が強いようです。
創傷部における薬剤のヨウ素放出性を比較したところ、カデックス>ユーパスタ だったと報告されています。(褥瘡および慢性皮膚潰瘍の治療のための外用ヨウ素製剤/日本緩和医療薬学雑誌)
一般にヨウ素の殺菌作用の強さは、放出されたヨウ素の濃度に比例すると考えられているため殺菌作用はカデックス軟膏の方が強いとされています。
「吸水性」はユーパスタが強い
両者とも高い吸水性がありますが、その作用機序は異なります。
カデックス軟膏は、基材の高分子ゲルが創傷部の過剰な水分を吸収することで乾燥させます。
それに対しユーパスタでは基材の白糖の浸透圧によって水分を吸収します。
褥瘡および慢性皮膚潰瘍の治療のための外用ヨウ素製剤/日本緩和医療薬学雑誌によると、ユーパスタは時間の経過とともに吸収した水分量直線的に増加していき、カデックスは途中で頭打ちになったそうです。
つまり吸水性でみるとユーパスタの方が優れていると考えられます。創傷部の水分が過剰な場合は有効ですが、度が過ぎると乾燥させてしまい治りが悪くなるかもしれません。
カデックス軟膏ではある程度浸出液を吸収すると、傷口とカデックス軟膏の間に浸出液がとどまり傷口を浸潤させることができます。
参考HP
褥瘡および慢性皮膚潰瘍の治療のための外用ヨウ素製剤/日本緩和医療薬学雑誌
褥瘡辞典 for MEDICAL PROFESSIONAL/maruho
ユーパスタ[白糖・ポピドンヨード]:褥瘡治療薬/薬局実習.com
褥瘡状態判定スケールDESIGNと外用薬・ドレッシング材の使い分け
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