去年の終盤に一気読みし、魅了された「この恋と、その未来」
性同一障害を扱い、ラノベとは思えないほどの繊細さ、残酷さで描かれた作品ですが、
打ち切りの悲劇を乗り越え無事最終巻発売。
ほんと待ってた。電子書籍になるのほんと待ってた。
最終巻も一気読みでした。素晴らしかったです。
実はアニメイトとかでは限定SSがついてくるらしいと知ったのは読破してからでしたが…
本の詳細・あらすじ
この恋と、その未来。 ―三年目 そして― /森橋ビンゴ(ファミ通文庫)
――本当に、お前に会えて良かった――
高校最後の一年と四郎を残し、未来は去った。広美と結ばれた四郎は、彼女との将来のため料理を勉強し、広島に留まろうと考え始める。気が置けない友人達や相変わらずの和田、ぎこちなさはありつつも、優しいままの三好。未来だけがいない穏やかな日々を過ごし卒業を迎えた四郎は、独り立ちを前に父からの誘いで一時東京へ戻ることに。これからのことを母や姉達にも伝え、自分の未来へ歩き出した彼に、思いがけない再会の時が訪れる――。待望の、最終幕。
みんなが前を向く素敵な最終巻
4巻で自分の周りすべてをぶち壊して、5巻で元通りには心の落ち着ける場所を見つけた四郎。
未来が去った後の高校3年の1年間はあっという間に過ぎてしまいました。
最後の一年っていったら、学園モノではいろんなイベントがあってしかるべきなのにほんとあっさりしたものでした。
でもそりゃそうだよね。未来がいないもんね。
広美さんのことを真剣に好きになっていても、心の隅には未来への思いも完全に消えたわけではない。
そんな少し自分に罪悪感を持ちながら過ごす最後の1年。
高校三年になりみんなそれぞれの進路へと向かうなか、ぶん殴られた和田ちゃん、傷つけてしまった三好さん、みんなのアイドル梵ちゃん
さらにもう会うことはないと思っていた要ちゃん。
みんなそれぞれ前を向いているのが読んでてわかります。
特に冷遇されっぱなしだった三好さんが新たに恋してるのが良かったです。
そして早すぎる未来との再会。
まあいきなり「そして数年後――」ってなって男になった未来に会うのもどうかと思ってたので、ここで再会して綺麗にまとめたのはさすがでした
一緒に歩んでいけない相手を好きなったらどうするのか
その人のことがほんとに好きで幸せにしたいけど、自分がその人と一緒になることはその人を不幸にすることと同義。
性同一障害の相手を未来を好きになってしまった四郎。でもそれは「女性としての未来」でした。
相手の幸せを願うのなら、未来は「男として」幸せにならないといけない。
でもそれだと自分は未来と一緒に歩むことができない。
四郎の高校生活はそのジレンマに苦しみもがき続けたものでした。
それは最終巻でも完全に消えることもありませんでした。
未来と再会した四郎は「未来への気持ちが再燃するといけないから」と
久しぶりに会ったにも関わらず長居することなく帰ってしまいます。
そして未来もそれを引き留めません。
互いに親友だと言い合える仲でも、近くに居続けることが最良ではないって結論は
四郎も未来も成長したなあと思いつつも、少し悲しいかな。
それがベストなんだろうけどね。難しい。
自分を受け入れてくれる人の大切さ
四郎も未来も、最終巻ではそれぞれに大切な人がいます。
高校にいたときは「男になること」に拘ってきた未来ですが、今の自分を受け入れてくれた人のお陰で「性転換のリスクを考え、今のままその人といること」を選びます。
今まで肉親からも認められなかった「ありのままの自分」を受け入れてくれる。
すごい素敵だなと。初期の段階ではあの人物がそんな存在になるとは思いもしませんでしたが(笑)
そして四郎も未来への思いは消えることはなくても、そんな自分を受け入れてくれる広美さんがいます。
自分の負の面・コンプレクスも受け入れてくれるって理想だけど、そうはいないよね。
ラストはあっさりしていたけど、それがこの二人の関係なんだろなと思うと納得できます。きれいに終わって良かった。
ほんと素晴らしいシリーズでした。ラノベであるのがもったいない。
いろんな人に読んでもらいたい作品でした。あとがきによるともうラノベは書かないそうですが、また新たな作品を読むことが出来るのを楽しみにしています。
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