【小説感想】これは、悲劇の記憶である。『オーダーメイド殺人クラブ/辻村深月』

本・漫画
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久しぶりに辻村作品の個人的ヒット作。結末が読めなくて面白かったです。

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本の情報・あらすじ

オーダーメイド殺人クラブ/辻村深月(集英社)

教室内ヒエラルキー上位の「リア充」女子グループに属する小林アン。中学二年生の四月、突然友人たちから無視されるが、同級生の「昆虫系」徳川勝利の言葉をきっかけに仲直りする。しかし、家や教室に絶望感を抱くアンは、自分と共通する美意識を感じる徳川に「私を殺して」と衝動的に依頼する。

ふたりが作る事件の結末とは――!

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辻村深月の真骨頂!

めっちゃ面白かった。辻村深月の初期の作品(~スロウハイツくらいまでと短編集)が好きな自分としては久しぶりに読みたかった辻村深月作品が帰ってきたって感じ。

多感なお年頃の女子グループのリアルな人間関係(大学でも似たようなことしてた女子もいたけど)、そのくらいの年代の人なら多くの人が一度は思うであろう「自分は特別でだ、そうありたい」と思う願望。それが事細かに描写されている。些細なきっかけでいじめる側といじめられる側が入れ替わる不安定な女子の人間関係とか特に。

自分の命を使い特別な死を遂げようとするアンと徳川。仲良かったグループにハブられようとも親に理解されなかろうと「もうすぐ殺してくれるから今日も頑張る」という希望をもち日常生活をこなす一方で「特別な条件」で自分が殺される計画を立てるアンとそれを手伝う(=殺す)徳川。

『これは、悲劇の記憶である。』

最初のページに書いたら、徳川がいつの間にか覗きこんでいた。

「記録じゃないの」

呟くように尋ねる。顔を上げたら目が合った。

「記憶じゃなくて、記録じゃない?普通、こういうとき」

「別に、よくない?こっちでも  (本文125ページ)

このやりとりが最後で生きてくるのが、物語の作り方が丁寧でとても良かった。

短編集とかでこの二人のアフターストーリーとかこの時の徳川サイドの話を書いてくれんかな。

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