サークル:hatuburgの貴城はつさんが書くレミリア・スカーレットの同人小説です。
幻想郷に至るまでにレミリアがこの世界でどのように生きていたかを描く「レミリアスタコージウシリーズ」
西洋史と東方の原作を結びつける手腕がすごくて、もうこれが公式設定でいいんじゃね?ってくらい史実との摺り合わせがすごい。
重厚な歴史小説を読んでる気分になります。
本の詳細・あらすじ
王女と吸血鬼/貴城はつ
一七世紀前半、ヨーロッパ。
ドイツに君臨する神聖ローマ帝国は荒れ狂う戦火の中にあった。
物語の舞台は、帝国辺境の小規模領邦、アーデルスリート城伯領。
少女ながらに封土を任された摂政マリアは、過酷な時代に翻弄されていく。
だが、彼女に手を差し伸べた者がいた。
彼の名は――レミィ。これはとある吸血鬼の軌跡を補完する一つの物語。
とある王女の為の物語。
東方本格派西洋時代小説、開幕。
特設HP⇒prinzessin
がっつり濃厚な西洋小説
この作品はレミリア・スカーレットが幻想郷に来るまでの過去を描く「レミリア・スタコージウ・シリーズ」の1冊目として書かれています。
東方project二次創作なんですが読み始めは商業誌と勘違いしそうになりました。
エピローグ以外では東方キャラはレミリアしかでてこず、あとはオリジナル(史実?)のキャラばかり。
しかもレミリアも体格に似合わない重い鎧と武器を持つくらいで吸血鬼としての能力もほぼ出てこない。
初めて読んだときはレミィ=レミリアとわかるまでにけっこうかかりました(笑)
原作要素は少ししか出てこないので、「これを東方キャラでやる意味は?」みたいに思う人がいるかもしれません。
でもこの少しの東方成分が絶大な威力を発揮します。
最後まで読んだら「凄まじい東方二次創作だった」って溜息しか出ないはず。僕はそうなりました。再読してもそうなりました。
歴史小説としての完成度が高い
物語の舞台は、三十年戦争の渦中。辺境の城で摂政として国を背負うマリアと彼女に仕える騎士レミィ(レミリア)を中心に物語は進んでいきます。
話の構成や文章力がその辺の小説よりしっかりしてます。どれだけ史料を調べたんだろう。
ただ僕は歴史には疎いのでどこまでが史実でどこからが創作なのかの境がわかりませんでしたが、予備知識がなくても楽しめます。
ちょっと堅い文章ですが、風景や戦闘描写がうまく、その映像が浮かんでくるようでした。
馬上槍試合やラストの合戦のシーンを読んでるときは興奮が止まりませんでした。
この作品を書くのにどれだけの資料を読み込んだのか。
誰かに仕えてても溢れ出るカリスマ
この作品ではレミリアは軍を束ねる騎士として登場します。
鉄砲が主流になり重いだけの甲冑が廃れてきた時代でも、表紙のイラストのように全身に甲冑をまとい、愛馬を駆って戦を指揮するレミリア。めっちゃ似合ってます。
馬上槍試合に至るまでのやりとりや、合戦での振る舞いや号令など、獏らが騎士と聞いてイメージする王道な騎士そのものでした。言動がいちいちかっこいい。
そして騎士とは誰かに仕えるもの。
レミリアは自身の目的が別にあるものの、アーデルスリート城を若くして背負うマリアに仕えています。
知識・経験ともに上回ってるレミリアは、マリアに対し最初の方は距離をあけて打算的に振る舞ってるんじゃないかと思いましたが、
終盤、城と運命を共にしようとするマリアを説得しようと声を荒げ、嗚咽するレミリアにはぐっときました。
常にどこか余裕のある印象だったので感情を露わにするシーンは良かったです。
オリキャラがいい味を出していいる
レミリアの過去譚なのでオリジナルキャラが出てきますが、どの人物も濃いです。
若輩でしかも女性でありながらも国を背負うマリア
傭兵を束ね、レミリアと馬上試合をするラーフェル
宰相を務めながらも、最後は合戦を指揮するというハイスペックジジイのアルニム
などなど。数は少ないものの、どのキャラも物語を語るうえでは欠かせない存在となってます。
ラーフェルかっこいいよラーフェル。
表紙のレミリアでビビっときた人は読んで損しないと思います。西洋史好き、レミリア好きの人は是非一度お試しあれ。
書籍で手に入れるのは難しいのでメロンブックスDLで電子書籍を購入することをおすすめします。
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