辻村深月さんのアニメを題材にしたお仕事小説です。
プロデューサー監督名言菓子の3人の女性を主軸とした三つの短編で構成されていて、アニメ業界のシビアな内面これでもかと描かれています。
作中のキャラを通した辻村さんのメッセージがすごい伝わってきてめっちゃ面白かったです
本編だけでなく巻末の対談も良かった。辻村さんがアニメ大好きで業界の取材をしっかりしてるのが伝わってきました。
本の詳細・あらすじ
ハケンアニメ／辻村深月
監督が消えた！？
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『 運命戦線リデルライト』。 プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ 。同じクールには、期待の新人監督・ 斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『 サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。ハケンをとるのは、はたしてどっち？ そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈、 聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平……。 ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、 次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす！ 熱血お仕事小説。
覇権アニメとは
覇権アニメとはそのシーズンで一番のアニメのことを指します。
具体的なもので言うならブルーレイやDVDの売り上げを指すのですが、そのシーズンの中で一番面白かったアニメのことを覇権アニメとする人もいるので具体的にこれと決まっているわけではありません。
でも主人公たちは誰に聞いてもそれが一番だっていうアニメを作ろうとしています。
この作品では 王子監督が作る「リデルライト」と斉藤監督が作る「サウンドバック」という二つのアニメ制作を主軸に物語が進みます。
シビアなアニメ業界
アニメ業界を描いた作品といえばSHIROBAKOが有名です。僕も見ました。めっちゃ面白かった。
あれはアニメ制作に関わる女の子たちがしんどいながらもキラキラしてる様が描かれてる感じなんですが、ハケンアニメは売上とか場末のイラストレーターとか聖地にされた地元の葛藤とかシビアな大人の事情とかをガンガン書いてる印象でした。
毎シーズン20本以上のアニメが放送され、DVDやグッズが売れないと赤字前提の厳しい業界だと改めて思いました。日本の誇る文化は薄氷を踏むようなギリギリで保っているのだ。
どちらのアニメも応援したくなる
天才と呼ばれる周囲が困惑するくらい自由に振る舞ってる監督も実はりを振り回しでも誰よりも悩んでいる監督。
売上を何より重要視する敏腕プロデューサーとタッグを組む女監督。
自分の住んでるところがアニメの題材となり、地元の町おこしに参加するイラストレーター。
三者三様でそれぞれ苦悩があるも一番を目指して頑張ります。
アニメ制作の大変さやそれぞれの仕事観の違いなども面白いのですが、何より作中に出てくるアニメがめっちゃ面白そうなんですよね。これ単体でちゃんとした話として見たい。
リデルライトは年1回のバイクレースを通して成長する主人公が描かれていて、1話毎に1歳成長した姿で登場します。第1話は6歳のときのレース、第2話は7歳のときのレース、みたいな。
対してサウンドバックはロボットアニメで少年少女たちが音を込めてロボを創造し怪獣を倒します。順調に怪獣を倒していくのですが、話が進むに連れてロボを創るのに込めた音とそれにまつわる記憶がヒロインから失われていくということが判明して…というお話です。
映画化されたことでどちらも公式HPができていました。アニメもそれぞれHPができているし本格的で楽しみです。
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