「江戸川乱歩賞受賞作」という言葉に惹かれて読了。
最近ラノベばっかりだったのでたまにはこういう硬派な小説も良いよね。
刑務所内で行われた殺人事件。最初はムショ内だけで片付くかと思ったが話が進むにつれてどんどん広がっていき最後は政治汚職まで…
デビュー作らしいんですが序盤の引き込まれる感じがすごかったです。
本の詳細・あらすじ
プリズン・トリック/遠藤武文 (講談社文庫)
一気読み必至!
乱歩賞史上屈指の傑作ミステリー選考委員のド肝を抜いた「鉄壁のトリック」
市原の交通刑務所内で、受刑者石塚が殺され、同所内の宮崎が逃亡。遺体は奇妙にも“前へ倣え”の姿勢をとっていた。完全な密室で起きた事件は、安曇野を舞台にした政治汚職にまで波及していく。単行本未収録の“ある人物からの手紙”を収めた最強のトリックミステリーを、早くも文庫化!<第55回江戸川乱歩賞受賞作>
被害者も入れ替わり犯人も入れ替わる
事件は刑務所の中で行われます。
受刑者が受刑者を殺す。しかも密室殺人で犯人は逃走している。
凶器はどこから入手したのか?刑務官の見回りをどう掻い潜って殺人現場まで行ったのか?逃走した犯人の行方は?密室は
そもそも刑務所の中という閉鎖された空間で殺人を犯したのか。
いろんな謎が出てきます。
捜査が進むとさらに事件が複雑化していきます。
なんと被害者と加害者が逆になっている。
しかも加害者は偽物だった。
なんで犯人は成りすましてまで刑務所に入り殺人を犯したのか。
読めば読むほどこんがらがっていくのが面白かったです。
登場人物がみんな後ろ暗い
この物語はいろんな人に視点が切り替わりながら物語が進んでいます。
交通事故を起こし子供を死なせた受刑者、仕事が嫌になった刑務官、家庭に問題がある捜査官、命の重さに耐えれなくなった元ジャーナリスト…
みんな何か闇を抱えているのが印象的でした。
特に飲酒運転で子供を死なせてしまった受刑者が印象的。
飲酒運転南んて許されるものではありません。彼は服役中はずっと後悔してて出所後に被害者のお墓参りをしようとします。
でも被害者の親からしたら加害者の顔なんて見たくもない。子供の命を奪っておきながら、しかも飲酒運転で奪っておきながら、数年の服役だけで社会に戻れるなんてあんまりだと。
恨んだって子供は帰ってこない。そんなことわかっていても気持ちのやり場がない。
そんな言葉を聞いてますます後悔の念が強くなりちゃんとしようとするんですが…
でも社会は一度でも犯罪を犯した人にはやさしくない。親にも見捨てられ住むところも働くところにもあてがない状態で、彼は刑務所は楽だったなと思うようになっていきます。
逃げたらあかんけど生きていくには辛すぎる。そんな絶望がありました。
この受刑者のこと以外にも飲酒運転の事故がいくつか作中で扱われていたのでそこをもっと突っ込んでも良かったんじゃないかと思います。
ただいろんな登場人物が多方面から事件を追うので誰がどこにいるのかが把握しにくく、どの人物も均等に描かれてるので誰が物語の本筋なのかわかりにくかったのが難点。
伏線をラストに回収するもちょっと尻切れトンボな作品でした。
でも途中まではぐいぐい引き込まれたしこれがデビュー作なのはびっくりです。
著者の他の本も漁ってみようと思います。
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